2024年12月からスタジオ撮影「PORTRAIT」ならびに
「 WALNUT FRAME 」の価格を変更させていただくことになりました。
少し長文になりますがお付き合いくださいませ
ここ数年止まることのない現像液、プリントペーパー、その他薬品などの原材料の高騰が続き
なかでもPORTRAITをはじめたころよりもフイルムの価格が5倍以上にも膨れあがっています。
それでもぼくは、スタジオ撮影だけでなく作品や日常も家族の風景もすべてフイルムカメラで撮り続けています。
それは写真家としてフイルム以上の表現はないと愚直に誰よりも信じているからです。
大げさかもしれませんが、クリストファーノーランをはじめいまだに映画をフイルムで撮影する映画監督たちと同じように。
きっとmogu cameraに現像に来てくださるお客様やフィルム写真教室に通う生徒たちもそう思っているはず。
いまや中判ネガカラーフィルムでスタジオ撮影をし、
さらに現像プリントまですべて自分で行っているのは国内ではほぼ皆無だと思っています。
フイルムも多少は安価なものもあるのですが、それでは思うような質感はえられないので
PORTRAITではいま現存しているネガフィルムのなかでは
プロ用のもっともきめ細かく(特にお肌が美しく)プリントできるフィルムを選んでいます。
一度の撮影で他のスタジオのように枚数は撮れないし
華やかな背景や花や小物があるわけでもないし
最新のデジタルカメラを使っているわけでもありません。
ただ何もない真っ白な空間で、
すこしの緊張感のなか背を正し、1枚1枚みなさんと呼吸を合わせ
1970年代に作られたカメラHASSELBLADで
新しい表現を探し続けながらシャッターを押し続けていきます。
そして額のほうは、
数年前に起こったウッドショックと言われる世界規模での木材価格の大幅な高騰から一度は落ち着きを取り戻したように見えたものの、
ウォールナットなどのブランド木材は世界中でますます希少となりいまだ高騰が続いています。
そして額縁の木材だけではなく、
ビス一本でさえもというように形あるものすべての原材料の高騰も続いています。
このウォールナット(くるみの木)のフレームはひとつの場所で完成するのではなく
ほかではまず見ることのできないくらいの角がシャープな額縁は愛知県で。
ただ保護するだけではなく、さらに写真を凛と見せるための硝子は、数少なくなった国内の硝子メーカーさんで。
どんな部屋にも調和して飾ることができる大きな役目となっている写真と額縁のあいだの白マットは関東で。
mogu cameraがオープンして以来、ぼくのわがままな要望に快く受けてくださっている額担当のかたが、
これらの方々を探し見つけ繋ぎまとめあげてくださったからこそこのウォールナットフレームは生まれました。
額は写真にとっての晴れ着です。
不思議なことに同じ写真のはずなのに額装すると、別の写真になったかのような錯覚を覚えます。
まるで写真が晴れ着を着て背筋を伸ばしているかのように
それくらいたくさんの技術がひとつになってできたこの額には写真をさらに昇華させる力があります。
スタジオ撮影でも、昨今はデジタルデータだけで渡すのが主流になっていますが「 P O R T R A I T」では
これからも写真を形あるものとして
何よりインテリアやアート作品と同様に飾るためにも
このウォールナットフレームを使い続けていきます。
最後にひとつ
これだけは約束します
2011年にはじまったこのPORTRAIT
ぼくの撮影技術も感覚もディレクションも
何より写真への情熱も確実に上がり続けています。
今回の価格改定が後ろ向きな原材料の高騰というのではなく
またさらに年々そして日々進化していく
ぼくのPORTRAITに対してだと
前向きに思っていただけると幸いです。
小倉 優司